英語資格試験英文解釈4

今回も国連英検特A級からの引用です。(2019年第2回)
文は短いですが、比較的使う機会の少ない文法の紹介が主なテーマです。

Fukuyama finds in Hegel a more profound understanding of human nature than can be gleaned from the ideas of such philosophers as Thomas Hobbes and John Locke, who privileged self-preservation above recognition.

(前提)文中に出てくる固有名詞はすべて哲学者の名前です。この文のideaは「哲学者のidea」とあるので、「思想」と訳した方がよいでしょう。

●今回のテーマは「than」です。中学校でも学習するthanですが、この文ではもう少し特殊なthanで、うしろがcan beとなっていることから関係代名詞のような役割をしています。このthanは「疑似関係代名詞」とよばれ、比較の文で用いられます。

例を示してみると、
Don’t spend more money than is needed.
「必要以上の金を使うな」
この文では、thanの前のmoneyを先行詞としてthan is neededが関係詞節のような役割をしています。

●ということで、than can be以下は関係詞節とすると、先行詞がhuman nature ということになりそうですが、文脈を考えると少し見方を変えたほうがよさそうです。

●関係詞の先行詞を考える際、直前の言葉が先行詞にならないことが少なからずあります。いくつかの場合がありますが、関係詞の直前に前置詞句がある場合はよく見られます。これを意識して今回の文をみると、文脈上understandingを先行詞ととることになります。この文はunderstanding of human nature(人間の本質の理解、人間の本質を理解すること)の程度を比較しているため、(more profoundということ)、先行詞を1語であげるならunderstandingということになります。これを英文で見ると、

understanding (of human nature) [than can be gleaned…]
「…から得られる人間の本質の理解」

in Hegel a more profound understanding of human nature than can be gleaned from the ideas of such philosophers as Thomas Hobbes and John Locke
ホーブスやロックの思想よりへーゲルのほうがより深く人間の本質を理解している」

となっています。

●,whoは関係代名詞の非制限用法です。第1回でも扱いました。

●previlegeのあとにaboveがあります。使われるケースは少ないようですが、ここでは 「recognitionよりself-preservationを重視する」という使い方をしています。aboveの基本的な意味から判断できるでしょう。

 

これらをまとめるとこのような訳になるでしょう。哲学などを扱った文ですので訳を少し硬いものにしています。

「フクヤマは、自己保存を承認よりも重視したトマス・ホッブスやジョン・ロックのような哲学者から得られる思想よりも、ヘーゲルにおいて人間の本質へのより深い理解があるということを見出している」

 

今回のテーマ、疑似関係代名詞thanについては接続詞と考えて省略が行われているという解釈もあるようで、この点は意見の分かれるところではあるようです。

関係代名詞の非制限用法は通常は補足説明ですが、ここでは通常の制限用法のように訳しました。ただし、固有名詞には制限用法は使えないので、英文では「,(カンマ)」がついていることは忘れてはいけません。

今回先行詞の判断を文脈や意味から判断しましたが、文によっては先行詞の直後の動詞の時制(主格の関係代名詞の場合)によって判断できることもあります。今回はそれができなかったので文脈での判断としました。

英語資格試験英文解釈3

今回は国連英検特A級の長文からの引用です。(2019年第1回)

This is an indication of the impact technological change in the production process has on the multinational corporation-state relationship.

まず1回読んでみてください。1回で完璧に意味が取れなかった方は少しずつヒントを出しますので少しずつ文を読むようにしてみるとよいと思います。(隙間を空けますが、広告が自動で入ることがあります。読みづらい場合は申し訳ございません)

1.has onとは何か、を考えてはいけません。

 

 

2.impactの品詞を考えましょう。

 

 

3. impactはonとセットですね。

 

ここで正解を先に書くと

「このことが生産プロセスにおける技術革新が多国籍企業と国家の関係に及ぼす影響を示している」

のようになると思います。

では構造を解説してまいります。

●はじめに書いたように、has onというのは何かの熟語ではありません。実はhasとonの間に切れ目があります。
というのもこのonはimpact onというつながりからきているもので、この文のimpactは定冠詞theが直前にあるため名詞「影響」です。on以下への影響、というように訳すことになります。impactの後ろは関係代名詞thatが省略されており、 technological change in the production process hasが挿入されていますので、一度この挿入をなくすと

the impact on the multinational corporation-state relationship.
「多国籍企業と国家の関係への影響」

となります。

挿入の部分は関係詞節ですので、「生産プロセスにおける技術革新が及ぼす(影響)」のようにして意味を挿入するとよいでしょう。

 

●indicationは「示すこと」と訳されることが多いですが、
this is an indication of →this indicates (that)「これは~を示す」のようにすると訳しやすいですね。

したがって、

「このことが生産プロセスにおける技術革新が多国籍企業と国家の関係に及ぼす影響を示している」

というようになります。

 

前回も熟語を手がかりに読むというのを扱いましたが、impact onは熟語というよりは語法という観点に近いでしょうか。

なお、the impactの時点で関係代名詞の省略を疑っていれば、hasで切れることにすぐ気づけたかとは思います。

難易度が高いわけではないですが、解釈の観点ではよい文かと思いますので紹介いたしました。