英語資格試験英文解釈5

5回目の今回は英検1級からの引用です。(2018年第3回)
解釈の事情により少し長めに文を扱います。最後まで読んでいただくとその理由がわかります。

では、いききましょう。文の難易度としては決して高くはありません。

When Gladio’s existence was exposed in 1990, it came about as a result of Italian judge Felice Casson’s investigation into acts of domestic terrorism in Italy during the 1970s. Casson revisited an unsolved car bombing that had killed three police officers in the village of Peteano in 1972 and had originally been blamed on a left-wing terror organization known as Red Brigades. Crucial to the original investigation had been the report of a police explosives expert, who asserted the bomb had been homemade. Casson, however, revealed the attack to have been the work of a neofacist group known as Ordine Nuovo.

(前提)この文のGladioはイタリアの秘密軍隊のことで、この軍の存在が明るみ出て物議をかもしたという流れでこの文(今回はほぼ一つの段落ごと抜き出しています)が来ています。

■解説

●今回のメインテーマはCrucialから始まる一文です。Crucial to the original investigation had… というように、一見Crucialが主語のように見えますが、ここで落ち着いてcrucialの品詞を考えます。

●crucialは「決定的な、重要な」という意味の形容詞です。ですから主語にはなりえません。ではこの文の主語はどれでしょうか。

●結論を言うとこの文の主語はhadの後ろにあるthe report( of a police explosives expert, who asserted the bomb had been homemade)です。すなわちこの文は倒置をしています。

●一般に第3文型SVCはCVSのような倒置をします。
The boy was poor.
Poor was the boy.
ように主語と補語が入れ替わります。

●ですのでこのcrucialから始まる文も次のようになっています。
(倒置前)the report of a police explosives expert, who asserted the bomb had been homemade had been crucial to the original investigation

(倒置後)
Crucial to the original investigation had been the report of a police explosives expert, who asserted the bomb had been homemade

●さて、学校などの文法学習は、「倒置をしている」で終わってしまうことが多いですが、大切なのは倒置をしている理由です。なぜわざわざこの文を書いた人は倒置をしたのでしょうか。

●それを考えるために一度Crucial以前の文そのあとの文を日本語に訳しておきましょう。
「グラディオの存在が1990年に明るみになったのはイタリアの判事Felice Cassonが行った、1970年代のイタリア国内のテロの調査の結果としてのものだった。Cassonは、1972年にペテアーノ村で3人の警察官が殺され、赤い旅団として知られていた左翼テロ組織が起こしたと当初考えられていた未解決車爆破事件を再び取り上げた」
「しかしCassonは、この攻撃がオルディネ・ヌオーボとして知られるネオファシスト集団のしたことだと明らかにした」

●さらに、curicial~の文も日本語に訳し、この訳文も倒置を考えます。倒置をする前とした後で比べてみましょう。

(倒置前)「爆発は手製だったと断言した警察の爆発物専門家の報告書が当初の調査の決め手となった」
(倒置後)「当初の踏査の決め手となったのは、爆発は手製だったと断言した警察の爆発物船問題の報告書だった」

この二つの文のうち、下の文のほうを当てはめたほうが、はじめの文からの流れ、そのあとの文の流れとしては自然ではないでしょうか。実際に作ってみましょう。

「グラディオの存在が1990年に明るみになったのはイタリアの判事Felice Cassonが行った、1970年代のイタリア国内のテロの調査の結果としてのものだった。Cassonは、1972年にペテアーノ村で3人の警察官が殺され、赤い旅団として知られていた左翼テロ組織が起こしたと当初考えられていた未解決車爆破事件を再び取り上げた。当初の調査の決め手となったのは、爆発は手製だったと断言した警察の爆発物船問題の報告書だった。しかしCassonは、この攻撃がオルディネ・ヌオーボとして知られるネオファシスト集団のしたことだと明らかにした」

いかがでしょうか。日本語としてこの方が読みやすいものになっているかと思いますが、これと同じことが英語でも行われています。すなわち、この文が倒置されていたのは、文の流れによるもの、ということになります。

●文の読みやすさという点では、古い情報から新しい情報というように流れている方がよいといえます。実際に、英検の英作文では「構成」という項目でこういった読みやすさが試されていますが、この文でも前の文の情報を受けて次の文というように構成されており、そのために倒置がされています。

●もう少し詳しく見てみると、crucial~の文以前で、「当初は「赤い旅団」が起こした事件と考えられていた」とあるので、crucialの文の動詞の前では「その調査の決め手」ということを述べ、動詞の後にその決め手の内容を述べています。さらに次の文では、それが実は違った、という構成になっているため、全体的に文がうまく流れているイメージになると思います。

●なお、今回文を長く引用したのは、この「文の流れ」を考えるためでした。

●倒置に関しては、倒置を発見するだけ重きが置かれていることが多いですが、こうした内容を理解しておけば長文の内容の理解にもつながるため、覚えておくとよいでしょう。

●なお、倒置の理由というものの中に、「強調」というものがあると思います。途中で紹介したPoor was the boy.はpoorであることの強調です。ただ、倒置をしているからには何か作者の意図があるということを意識しとくと、読解の幅が広がるのではないでしょうか。
※念のために触れておくと、否定の副詞句が文頭にくる場合などは「強制倒置」などと呼ばれるように、文法上のルールですから、文の内容理解とは異なるかもしれません。

 

文の流れを意識した倒置、という内容は、北村一真先生の著書「英文解体新書」にとても詳しい内容が掲載されています。ぜひ参考にしてください。

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