英語資格試験英文解釈2

今回も英検1級からの抜粋です。(2018年第3回)

Barrett offers the example of the brain’s response prior to an exam, when one individual may associate increased heart rate and sweaty palms with the feeling of “anxiety” based on past experience, while someone else might recognize that feeling as “determination.”

(前提)この文は言語と感情の関係について書かれた長文内の1文です。Barettは神経学者の名前で固有名詞です。

 

今回の大きなテーマは「熟語を意識すると構造が見える」というものです。全体の構造の難易度は高くないと思います。
では、文をいくつかに分けてみていきます。

・Barrett offers the example of the brain’s response prior to an exam
Barret(S) offers(V)  the example of the brains response (O)となり、prior to an examはresponseを修飾しています。prior toは「~の前」ですので、直訳すると「バレットが試験の前の脳の反応の例を提供する」となりますが、ここではofferを「(例を)挙げる」としてもよいでしょう。

・ when one individual may associate increased heart rate and sweaty palms with the feeling of “anxiety” based on past experience,

この文の中のwithが今回のテーマです。前置詞を見つけたときには後ろの名詞を含めた前置詞句が何を修飾しているかというような読み方をすることが多くなりますが、単純に直前の言葉を修飾しているという読み方だけをしていると、この文の場合、
sweaty palms with feeling「感情と汗ばんだ手」
のような大きな間違いをしてしまいます。
ここで気を付けてほしいのがassociateです。基本的にこの単語の訳を「関連付ける」というのは知っていると思いますが、であれば、
何と何を関連付ける、ということが書いてあるはず
ということになります。そこでしっかり振り返り、
associate A with Bという使い方をするはず
と考えることができればこの文の構造が見えてきます。

(when) one individual may associate increased heart rate and sweaty palms with the feeling of “anxiety” based on past experience,
となっていますので

one individual が increased heart rate and sweaty palmsthe feeling of “anxiety” based on past experienceを関連づける
という構造です。
withがassociateとだいぶ離れた位置にあることで読み取りづらい文になっているのではないかと思います。

緑の文の based on past experienceは直前のanxietyを修飾しているのはわかりやすいでしょう。

 

・while someone else might recognize that feeling as “determination.”

ここでもrecognize ~ as …のようになっていますが、ここではasがすぐに出てくるので気づきやすいでしょう。「that feeling をdeterminationとして認識する」となります。

なお、whileは「一方」と訳し、対比を表すことはわかるかと思いますが、さらにいえばassociate with とrecognaize asも同じような表現にすることで、より対比を明確にしていることに気が付いたでしょうか。こうしたことまで意識できると、文の内容をしっかりと把握できるようになると思います。

 

まとめると次のような訳になるでしょう。基本的には直訳に近いように訳します。

「バレットは試験の前の脳の反応の例をあげた。ある人は心拍の上昇と手が汗ばむのを過去の経験に基づいた不安と関連付けるかもしれないが、一方ほかの人はその感情を決意と認識するかもしれない」

英語資格試験英文解釈1

英語資格試験はたくさんあり、最近は解説が詳しいものが増えているものの、英検でいうと1級レベルのものを超えてくると、単に単語の意味や文の訳しか載っていなくて、なぜその訳になるのかを完全にわからないまま次に行ってしまったり、単に訳だけ見て終わってしまうということも少なくないと思います。それだと当然きちんと文を読めるようにならないので、合格に時間がかかってしまったり、なかなかな思うように長文を読めるようにならないということがあると思います。特に社会人の方が学びなおしのために英検などに挑戦している場合、基本的には該当の資格試験の参考書のみで学習することが多いかとおもいますので、解説が少ないことで勉強しづらいということはあるかと思います。

なかには、いわゆる精読力をあげるために大学受験のものを利用して勉強するということもあるかとは思いますが、やはり、実際の資格試験で出てきたものの解説が知りたいと思うでしょうし、どのように出題されているのか、という点で学習した方が効率的かとは思います。

ということで、ここでは英検1級や国連英検特A級、TOEFLなどの、普段構文の説明があまりされないような題材を扱って、「英文解釈」ということを進めたいと思います。

なお、解説のレベル想定は、高校英語の基礎的な内容はある程度しっている(完璧ということでなく)、英検準1級の問題にはある程度なれている、1級に挑戦している、というレベル感です。したがって基本的なの文法用語は標準的に使用していきます。

前置きが長くなりました。では今回の英文を考えてみましょう。

 

第1回は英検1級からの文です。

The shortage spelled economic disaster for Peru, whose lack of economic prudence left it no better off after the guano boom than it had been before it.

(前提)この文を含む長文はペルーが「グアノ(鳥糞石)」と呼ばれる海鳥の糞により一時的に繁栄したという話です。文中のshortageはこのグアノの不足を示し、guano boomはグアノによってもたらされた好景気のことです。

■解説

●カンマの前までのThe shortage spelled economic disaster for Peruは単語がわかれば訳しやすいでしょう。ここでのspellは「(災いなど)を招く」の意味ですので、「(グアノの)不足はペルーに災いをもたらした」でよいでしょう。

●カンマのあとの文が、今回の課題点です。

1. ,whose

このwhoseは関係代名詞ですが、その前にある「,」は関係代名詞の「非制限用法」のものです。

関係代名詞の非制限用法は基本的には補足説明です。ですので、基本的には「そしてそれは」とすると訳しやすいです。ここでは所有格なので、「そしてその~」と意味を取ると見えてくるでしょう。

2. leave(<left) O C

ここでのleaveは第5文型を作っていて、基本的な意味は「OをCのままにする」です。目的語Oはit(ここではペルーです)、補語Cはbetter offですが、これはwell off「裕福な」が比較級になっています。ですので、大枠は

(whose) lack of economic prudenceがit(ペルー)をwell off のままにする

ですが、これがこの後説明する「no 比較級 than」に組み込まれています。なお、prudenceは「思慮分別」です。

 

3. no 比較級 than

クジラ構文とよばれるものにも使われていますが、詳しく見ていきましょう。先ほどの「leave O C」は第5文型ですので、「O  is C」という関係が根底にあります。そこでこの本文をこのように変えてみましょう。

It (Peru) is no better off after the guano boom than it(Peru) had been before it(guano boom).

no 比較級 thanの「no」は二つの役割があります。1つは当然、否定しているということ、もう一つは、「差が0」ということです。

そして比較対象は今のペルーとグアノ景気の前のペルーです。

したがって、

・グアノ景気後のペルーは裕福ではない
・グアノ景気以前のペルーと後のペルーのwell off(裕福な(状態)は差がない

という意味が入っています。つまり、「グアノ景気後のペルーはグアノ景気のペルーが裕福でないのと同様、裕福になっていない」ということになります。

 

これらをまとめて直訳するとこのようになるでしょう。

「(グアノの)不足はペルーに経済的な災いをもたらした。そしてその(ペルーの)経済的な思慮分別のなさはグアノ景気以前の裕福でなかった時と同様、グアノ景気後のペルーを裕福にはしなかった」

 

英語の資格試験では和訳という形の問題は出題されませんので、ここまでの意味が取れれば内容の理解は十分です。

なお、これをきれいに訳を取る場合、名詞構文を動的に訳すこと、結局はペルーはグアノ景気後は裕福になっていないということをふまえて、次のように訳すことになるでしょう。

「(グアノの)不足はペルーに災いをもたらし、経済的な思慮分別をせいで、以前より裕福になることはなかった」